
2026年6月26日、京都経済センターにてTech Japan主催のもと「日印インターンシップ交流イベント」が開催されました。本イベントでは「受け入れ企業によるパネルディスカッション」と題し、インド工科大学(IIT)をはじめとするインドの高度人材をインターンシップとしてすでに受け入れている企業3社が登壇。インドエンジニアの受け入れ背景から実際の成果、苦労した点、そして今後インターンシップ制度をどう進化させていくかまで、各社の実体験がざっくばらんに語られました。
株式会社島津製作所は、計測機器・医用機器・産業機器・航空機器の4事業を中心にグローバル展開し、従業員数3,700名超を擁する精密機器メーカーです。古賀氏は同社で、研究所のグローバル化を推進する立場からインド人材の受け入れ制度構築に携わってきました。
株式会社中北製作所は、船舶や発電プラントなどに向けて、自動調節弁、バタフライ弁、遠隔操作装置などを製造・販売する流体制御装置の総合メーカーです。宮崎氏はR&D部門に所属し、現場でインターンシップの受け入れ・育成を担当しています。
株式会社名友産商は、ねじおよび各種金属部品の転造加工(圧力をかけて成形する加工)に特化する企業です。代表取締役の南氏の主導のもと、現時点で社員の6割が海外籍という多国籍な組織づくりを進めています。
最初に、数ある高度人材採用の選択肢の中でインドの学生に注目された理由を伺っていきます。
古賀氏(島津製作所):私が所属している基盤技術研究所は、当社の将来の製品・サービスのための技術開発や新事業の開発をミッションにしています。日本人だけで日本を見て開発していていいのかという議論があり、研究所のグローバル化は必須だと考えています。インドは特にIT系・AI系のスキルが非常に高く、地理的にも比較的近いという点に着目しました。
宮崎氏(中北製作所):私たちは中堅企業で、なかなか優秀な人材が集まりにくいという背景がありました。加えて、船舶業界は他業種に比べてIT化が少し遅れている状態のため、IT分野に強いインドの方々を招き入れることで、会社自身を躍進させたいという思いがありました。
南氏(名友産商):現在、海外向けの就職説明会を行うと、5〜6割がインド人材からのオファーになるほど関心をいただいています。今回はたまたま日本にいるインドの方々が応募してくれたので、その方をメンターとして、初めて海外にいるインド人材の受け入れに挑戦することにしました。あえて南インドの学生を選んだのは、比較的コミュニケーションが取りやすいと聞いていたからです。
受け入れを始めたきっかけも三者三様です。古賀氏にきっかけを伺いました。
古賀氏(島津製作所):受け入れを始めたきっかけは、当社が参加している京都大学の「KU-STAR」プログラムです。インドからの短期留学生を受け入れるプログラムで、その中に会社見学があり、当社にも来ていただきました。多くの学生さんが非常に日本に親しみを持っていて「ぜひインターンシップをしたい」という声をいただき、検討が始まりました。当時、社内には海外の大学から直接インターン生を受け入れる仕組みがなかったのですが、研究所グローバル化の構想とうまくマッチし、人事部門と連携して2025年からインドからのインターン生の受け入れがスタートしました。

古賀氏(島津製作所):インドからのインターン生とのコミュニケーション言語は英語にしています。受け入れ部署の日本の方たちは大学院卒が中心で、英語の読み書きはある程度できるものの話すことに自信がない方が多いのですが、やってみると技術的な内容でも英語のコミュニケーションはでき、「やってみれば意外に伝わる」というところが、マインドセットの変化につながっていると思います。
宮崎氏(中北製作所):英語がしゃべれるようになるというよりも、片言の英語をしゃべる度胸がついたというのが一番大きな自分の変化です。だんだん向こうも日本語に興味が出て、例えば「見積もり」といった日本語のビジネス用語もそのまま通じるようになってきて、コミュニケーションがスムーズになっていきます。
南氏(名友産商):受け入れ最初は、会議でも空気を読んでみんなの意見を待っている感じだったんですが、「それでは、あなたたちが入った意味がない」と伝えたら、意見を言ってくれるようになりました。今は中国籍・ミャンマー籍・日本人の3名にマネジメントを任せていて、自分たちで課題を見つけて改善し始めています。当初は半年ぐらいかけて職場に慣れるものだと予想していたところ、もう夕方には「先輩教えてください」と溶け込んでいました。現場に与えた変化も大きく、周りの日本人社員から早くも「ボーナスを出してあげてください」という声が出るほどです。
受け入れ担当となった方にも大きな変化があったと、古賀氏は語ります。
古賀氏(島津製作所):日本人のメンターも、1ヶ月間のインターン生受け入れを通じて 成長する感じがします。英語のコミュニケーションもそうですし、インターン生の指導やインターンのテーマをマネジメントすることが、本人の自信や成長につながると思います。研究所内で英語が飛び交うのが自然になっていくことも、周囲のマインドセットの変化を後押ししていると感じています。
受け入れの過程では、言語や生活面での苦労も率直に共有されました。
南氏(名友産商):募集・受け入れ時に苦労したのは、学生のアピールがとにかく強いので、その中から誰を選ぶかという点です。応募は80人、100人と来るので、そこから1人2人を選ぶのはすごく大変で、1人でというよりも何人かで一緒に面接して評価した方がいいと感じています。また言語やオンボーディングの面では、最初に母国語でやってしまうと日本語の習得が遅れてしまいます。弊社は様々な国の方がいるので母国語の資料もあるのですが、最初は大変でも日本語でオンボーディングした方が、長い目でみると結局は早いので、その点を心がけています。
古賀氏(島津製作所):文化や価値観の違いは、海外人材受け入れに特有の苦労というより日本人同士でも同じことだと思っています。「日本に来たから日本のやり方に従え」というのではなく、我々もインドの方の考え方や文化を理解し、尊重する。そこがあれば、仕事以前に人としての関係性が築けて、結果的にうまくいくと感じています。
宮崎氏(中北製作所):手続き面では、給料から税金が引かれることなど、契約社会であるインドの方には事前にしっかり話しておかないと齟齬が生まれます。仕事面では、なんとなく分かり合えるだけでは終わらないので、議事録やドキュメントをちゃんと残してお互いの意識を統一することを意識しました。また、一番苦労したのは食事です。宗教上ベジタリアンの方も多く、例えば「うどんの出汁は大丈夫なのか」といったところまで、受け入れて初めて分かることがたくさんありました。

会場の企業担当者からは、多国籍な職場運営についての質問も上がりました。名友産商社では現在9カ国籍の社員が在籍していますが、共通言語はあえて日本語にしているといいます。
南氏(名友産商):国によっては、学校で英語を学ぶ国とそうでない国があるので、共通言語は日本語にしています。技能実習生の受け入れは15年前から、技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザでのエンジニア採用は10年前から続けていて、当時からの人材は永住ビザへの切り替えが進み、定住も始まっています。
最後のテーマは、インターンシップ制度の進化と「社内を巻き込んでいく方法」です。
古賀氏(島津製作所):IIT等のインド理工系大学のルールとして見られる「1人の学生は1社からのオファーを受諾したら、一定期間他の就職活動に参加しない」という仕組みは、よくできていると個人的には思っています。特に変化が必要とは思っていませんが、何人も受け入れられるわけではないので、そのバランスは難しいところです。社内を巻き込んでいく方法は、ボトムアップではなかなかうまくいかない部分があるので、やはりトップダウンでやるのが一番いいと思っています。当社の場合は研究所長が前向きなので、うまくいっているところがあります。
宮崎氏(中北製作所):インターンシップは非常に貴重な機会だと、改めて感じました。入ってほしい・入りたい・入りたくないは別として、1〜2ヶ月で日本を知れる、会社を知れる機会は非常に大事です。今日のようなイベントをしていただけることで、インターン生同士も「友達になったんだよ」とすごく嬉しそうに話してくれていて、こういうコミュニティを関西で作れることが非常にありがたいと思っています。
南氏(名友産商):学生募集と選考の方法では、自己PR動画を掲載してくれる学生がいるので重宝しています。文字だけの経歴よりもその人のキャラクターが伝わりますので、動画が掲載されている場合は見るのがおすすめです。社内を巻き込む方法については、外国人材を受け入れる意思があるからこそインターンシップをやっているのだと明確に伝えることが重要です。社員も最初から、採用するかどうかという目線と心積もりで見てくれるためです。

パネルディスカッションは、言語や文化の壁、受け入れ現場の苦労も含めて率直に語られた1時間となりました。3社に共通していたのは、インターン生の受け入れを通じて日本人社員側にも変化が生まれているという実感です。技術やスキルの高さだけでなく、真摯に取り組む姿勢や、周囲を刺激するコミュニケーション量の多さが、受け入れ企業の組織文化そのものを変えつつあります。
セッション終了後は交流会が設けられ、登壇企業とインターン生、そして参加企業同士が直接言葉を交わす時間となりました。

今回のイベントは、Tech Japanが展開する「Talendy Community」の取り組みの一環です。Talendy Communityは、インドをはじめとするグローバル人材の受け入れを「企業の成長」へ繋げるための実践型ネットワークです。制度設計や社内整備といった「採用前の初期課題」から、「入社後の定着・活躍」まで、企業のあらゆるフェーズに応じた具体的なメリットを提供します。
Tech Japanは2019年の創業以来「誰もが最高に輝ける社会を」というミッションのもと、インド高度人材の可能性に着目し、日本企業がインドの力で国際競争力を高めるための支援を続けてきました。インド人材の受入に関心を持つ日本企業は増加していますが、実際の推進には「社内基盤の整備不足」「組織的な合意形成の難しさ」「他社事例の不足」など、様々なレイヤーで壁が存在します。
今後も、企業の枠を超えて実践知を共有し合い、各社の取り組みをより効果的・持続的なものにしていくための機会と場を企画・提供してまいります。